世界の家電/IT製品の購入者にとって、サステナビリティは中心的な購買理由となっているのでしょうか?
世界は複数の危機に直面していますが、環境は消費者にとって長期的に高い優先順位であることに変わりはないという結果が出ています。
ニュールンベルグ2023年6月21日 – 環境汚染は、世界の消費者が過去7年間一貫して高い水準の関心を示していることの1つです。コロナ禍よりも、最近著しく高まっているインフレ懸念よりも、気候変動は人々の強い関心を引いています。2022年のGfK消費者生活調査の対象22カ国中13カ国において、気候変動は依然として上位5つの関心事に入っています。GfKの専門家が、消費者によって高まる持続可能性と環境への配慮が、世界の家電/IT製品(T&D)市場にどのような影響を及ぼしているのかを見ていきます。
短期的な混乱にもかかわらず、環境保護主義は消費者の間で急成長しており、長期的な個人的価値観となっています。気候変動に最も関心があるのは若者であるという考えが広まっていますが、2021年以降、最も関心を高めているのは、実は60歳以上の人々でした。2022年にはこの年代層の5人に1人が企業の環境対策をリサーチしていて、前年比6ポイント増となっており、そのうちの50%近くが環境に配慮した「グリーントラベル」を選んでいます。
環境意識は、あらゆる年齢層にしっかりと根付いています。動きの速い消費財(FMCG)業界では、プラスチックフリーのパッケージや天然成分といった環境配慮がすでに定着しており、消費者はそれに対してより高いお金を払うことを厭いません。では、持続可能性は家電/IT製品市場にとって推進力になっているのでしょうか?
欧州における運転指標としてのエネルギーラベル
2021年3月、EUは家電製品の新しいエネルギーラベルを導入しました。以来、Aクラスの販売シェアは1年で2倍以上となり、一部の国や製品カテゴリーではすでに6割を超えるシェアを獲得しています。その結果、価格帯も大きく変化しています。ヨーロッパにおけるA+++(旧ラベル)の食器洗い機の平均価格は、2020年には688ユーロでしたが、2022年にはクラス最高のAラベルに消費者が平均1,438ユーロを支払っています。これは、EUの新ラベルが、家電製品のエネルギー消費をより効果的に差別化し、再び消費者にとってエネルギー効率が魅力的なものになるという主目的を達成したことを意味します。
今後数年間、省エネ家電はA~C表示が主流となり、シェアを拡大していくことが予想されます。プレミアム価格帯での地位を確立するためには、小売店やメーカーがこの展開をリードしていく必要があります。
GfKの家電/IT製品専門家であるNorbert Herzogは・・・
“カーボンフットプリントのような企業の環境認証だけでは、消費者にプレミアム価格を正当化することは容易ではありません。耐久性とエネルギー効率は、家電/IT製品のライフタイムコストの全体的な節約と製品選択における環境保護を求める家電/IT製品の購買客にとって重要な要素です。“
飽和状態のスマートフォン市場:再生品とエコクレームがもたらすビジネスチャンス
世界のスマートフォン市場は飽和状態にあり、成長率が低下しています。成功し続けるためには、小売業者やメーカーが行動を起こす必要があり、成長を確保するためにはスマートフォンにおける持続可能的な要素が、今後重要となります。
家電/IT製品市場で成長を続けるトレンドのひとつが、再生品です。GfK Consumer Lifeによると、世界の消費者の27%が既に新品ではなく中古品を購入したことがあるという結果がでています。
GfKのNorbert Herzogは “技術的なデバイスに関しては、スマートフォンが再生品市場を支配していますが、ノートパソコンやゲーム機が追い上げています。” と説明しています。 “2022年に減収となった飽和状態の世界のスマートフォン市場の中で、再生品は明るい話題です。この分野では、今後数年間、市場平均を大きく上回る2桁前後の収益成長率が見込まれます。”
この展開は、フランスのGfKのデータからも明らかです。2022年、再生の為の整備済スマートフォンの販売額は前年比で約24%の成長率を記録したのに対し、新品は3%の増加にとどまりました。小売業者やメーカーにとって、この分野での新しい事業開拓は、失われた収益やマージンを補うだけでなく、環境に配慮した企業イメージを促進することができます。
スマートフォン販売店では、新規端末販売の際にエコクレーム(環境にやさしいことの主張)をアピールすることが増えています。7種類のエコクレームを監視しているgfknewronによると、EU4カ国*で2023年2月に販売されたスマートフォンの金額のうち、すでに71%が3点以上のエコクレームを伝えています。最も多いのは、エコパッケージ(販売台数の44%)、リサイクル素材(43%)、CO2排出量(41%)です。エコ包装を謳ったモデルの平均価格は、他のすべてのデバイスと比較して2倍以上となっています。そのようなスマートフォンの25%は、1,000ユーロ以上で販売されているものもあります。つまり、エコ包装をアピールすることは、小売業者やメーカーにとって非常に魅力的なのです。
結論と展望
GfKの Norbert Herzogは「消費者にとって環境は常に優先されるものであり、競合する関心事に短期的に気を取られようとも、決して消えることはありません」と結論します。「先行指標によると、エネルギー表示だけでなく、環境保護への取り組みが市場を動かし始めているようです。つまり、家電/IT製品部門にとっての問題は、「もし」ではなく、「いつ」持続可能性が消費者の購買決定における主要な基準のひとつになるかということなのです。
GfKは、これに対する答えを「7年以内」であると予測しています。2030年までに世界人口の50%がエコ活動を行うようになり、世界全体で消費者向けの家電/IT製品において7000億USドル以上の消費が見込まれると予測しています。
そのため、小売業者やメーカーは、目的と持続可能性に関する戦略の実行を急ぎ、ターゲットとなる消費者グループを深く理解する必要があります。まず、ビジネスプロセスや製品にサステナビリティを導入し、その後、信頼性を確保し、グリーンウォッシュのイメージを避けるために、正しいメッセージを発信することが重要な鍵となります。これは、サステナブル市場で長期的に成功するための必須条件です。
*EU4:ドイツ、フランス、イギリス、イタリア
調査方法について
GfKはリテールパネルを通じて、世界70カ国以上で家電、写真、通信、情報技術、オフィス機器、小型・大型家電の各分野におけるPOSデータを定期的に収集しています。数値はすべてGfKパネル市場によるもので、北米を除く全世界のデータであり、特に断りのない限り米ドルで表示されています。
gfknewronは、市場、消費者、ブランドのデータを、AIを活用したレコメンデーションで超高速に連動させる常時接続プラットフォームです。企業は、実用的で一貫性のあるインサイトを獲得することが可能となり、持続可能な企業成長の為にスピード感を持って行動することができます。このプラットフォームは、3つの特定のモジュールを提供しています。市場や競合のインサイトを提供する「gfknewron Market」、消費者を深く理解する「gfknewron Consumer」、市場データとAI搭載のインテリジェンスに基づき企業へのレコメンドを提供する「gfknewron Predict」です。
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